低出生体重児の増加により20人~30人に1人がNICUに入院する時代となっております。「こどもは未来の宝物、日本の将来の礎だ」と考えており、それを実現するために「赤ちゃんのことなら24時間いつでも気軽になんでもご相談ください、どんな症例でも診ます」というスタンスで地域の周産期医療に取り組んでいます。この赤ちゃんは相談して良いのか、どうなのか迷うケースもあると思います。今回はそのようなケースの考え方や対処・我々の取組についてご紹介いたします。是非ご覧いただき、近隣の産科の先生方からは産院に入院中の児に限りますが(退院した場合は小児科が対応)メール相談等も受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。
お産は予定日近くに元気に生まれてきて当たり前の風潮があります。
あまり知られていませんが、出生後呼吸循環動態など安定しない赤ちゃんが全出産の約10%おり、約5%の赤ちゃんが何らかの入院を要する処置が必要と言われています。少子化と言われていますが、母体年齢高齢化に伴い出生体重の低体重化が進んでいます。また、極低出生体重児(1500g未満の赤ちゃん)の数はむしろ増えており、生後早期の赤ちゃん(赤ちゃんが産院を退院するまで)を対象とする新生児科の需要は10年前と比べても減ることはありません。
当院新生児センター(NICU:新生児集中治療室)には体重が1,000gにも満たない赤ちゃんや、出生後何らかのサポートが必要な赤ちゃんが入院しています。未来を支える赤ちゃんに何かあってはいけません。すべての新生児が必要ならば十分で適切な治療がなされ、分娩時の様々な要因によって後遺症が残らないこと、またその後も元気に健やかに発育していけるよう赤ちゃんとご家族の幸せのために、外来で多職種の連携チームにて診療を行っています。
退院した赤ちゃんが、家族の一員となり、成長発達を遂げ、やがては「社会の一員となった時に初めて我々の使命は完了する」と思っています。そのために退院後も小児科・言語聴覚士・リハビリ科・訪問看護ステーション・地域の保健師・療育関係者・教育関係者の方々のご協力を得ながら、成長発達をフォローアップしていきます。
冒頭でご紹介したとおり「こどもは未来の宝物、日本の将来の礎」であり、それを実現するためには我々が24時間対応するだけでは足りません。そのため、小児の地域連携と地域交流を体現するために様々な取組を行っております。
特に今回は、診療所の先生方の地域連携にも大きく関わる、搬送システム・看護師助産師研修・ホットライン/メール問合せに関してご紹介いたします。
地域の医療機関で生まれた「新生児仮死や呼吸障害の赤ちゃんや低出生体重児など」いち早く手当てが必要な新生児を、治療しながらNICU(新生児集中治療室)を設置している当院へ搬送するために、活動しています。
通常の救急車とは異なり、ドクターカーには医師が同乗するので、救急救命士では行うことのできない医療行為を迅速に行うことができます。患者さんの容態を診ながら、安全に新生児を搬送することができます。また、出産直後のご家族にとっては不安でいっぱいかと思いますが、ママに抱っこや授乳してもらってからの出発や時間をかけて説明後、搬送を行う等により「安心をして頂いた上での医療」を提供しています。
多くの産科診療所の先生は人手不足の問題からも、いち早く手当が必要な新生児を医療機関に紹介する際に苦慮されることが多いかと思います。当院から車で到着するまで45分圏内(茨城県神栖市・山武市・佐倉市など)であれば産科診療所までお迎えに上がります。
帝王切開などの立ち合いを、赤ちゃん用の保育器等すべて持参して行うことで、いち早く赤ちゃんを連れて帰ることができますので、出産後にいち早く手当が必要な場合は、事前に当院にご連絡ください。「どこに紹介すべきか分からない」というケースも多いかと存じますが、当院がクッションとなり、適切な処置を講じたうえで必要に応じ、適切な医療機関への紹介も実施しています。
先生方もご存知の通り、新生児の治療は「いかに適切なタイミングで実施するか」が重要であり、その大きな要素を担うのが産院での「紹介すべきかどうかの判断」だと考えております。
当院では近隣の産院の方々をご招待し、年三回の振返りカンファレンスにて「こういう症例は迷うことが多いけど、危なかったよ」などの症例の振返りを行っています。一つの産院での経験を振返るのではなく、当院が近隣の様々な症例を紹介し地域全体で振り返ることで、地域全体の新生児の最適な地域連携実現に向け取り組んでいます。
生後早期の赤ちゃん(赤ちゃんが産院を退院するまで)を対象とする新生児科は、仮に先天性の奇形や当院で出来ない手術を要する疾患だとしても、まずはマネージすることが重要です。早期に受診すれば、回復が見込めた場合も様子をみてしまうことで手遅れになってしまうこともあります。そんな時に適切に判断し、後遺症なく赤ちゃんが元気に過ごすためにも24時間のホットライン/メール問合せを行っています。ホットライン/メール問合せ等は、「どのような状態から相談して良いか」等お悩みになることもあるかと思いますので、一例をご紹介いたします。
上記のような相談をして良いかどうかも迷うケースも、まずは当院のホットライン/メール相談の窓口にご連絡ください。近隣の産科の先生方との産院での入院中の児に限りますが(退院した場合は小児科が対応)当院のホットライン/メール相談の窓口のご案内を希望される方は、当院地域医療連携課までお問い合わせください。
ここまでご紹介したとおり、紹介した方が良いか迷うケースも含め、まずは当院にご紹介ください。当院は「どこに紹介したら良いかわからない」というケースも含め、クッションとなり受入をし「他の適切な医療機関にご紹介する」ということも行っています。地域の新生児医療におけるマネージャー的な存在です。