当部について
概要
検査部では、各診療科の要望により多岐の分野にまたがった検査を実施し、患者さんの治療に役立つよう迅速かつ正確な検査結果を提供するよう心がけています。検査部は大きく分けて、患者さんから採取された検体を検査する検体検査部門(検体検査第1課・2課、輸血課)と、患者さんを直接検査する生理機能検査部門(生理検査課)に分かれています。
検査部の理念
- 私達は常により良い診断・検査を目指し、技術の向上・知識の習得に努力します。
- 私達は検体1つ1つを患者さんと思い、大切に扱います。
特色
検体検査1課(生化学・免疫、血液)
3次救急施設であり、緊急検査・輸血に対応すべく24時間体制で行っています。また、当院は血液腫瘍科の患者さんが多く、血液疾患に関連する特殊な検査項目も行っています。
当検査室では、生化学・免疫のハイブリッド自動分析装置cobas8000(ロシュ社)を導入し、多彩な項目を効率良く分析することを目指しています。
生化学・免疫検査係
生化学検査は、血液中や尿中の化学物質(蛋白質、酵素、脂質、電解質など)を測る検査で、肝機能や腎機能などを把握するために必要不可欠な検査です。
免疫検査は、腫瘍マーカー・感染症マーカー・ホルモン・血中薬物濃度など生体内の微量な物質を免疫測定法により測定する検査です。
いずれの検査も正確な検査結果を迅速に報告することが求められるため、多くの項目が緊急検査や診療前検査に対応しており、採血から約1時間以内に結果を報告しています。
また、骨髄移植時に重要な免疫抑制剤の血中濃度や、災害時に備えたドライケム測定機器Piccolo xpress(水が不要)、SARS-Cov-2抗原の測定など多岐にわたるニーズに対応しています。
血液検査係
血液検査は、血液中の白血球・赤血球・血小板の数や形態を検査し貧血や炎症などを調べる血球算定検査や、血液の固まりやすさや血栓のできやすさを調べる凝固検査などがあります。治療方針の決定に重要な項目であり、迅速な報告が求められます
また、白血病などの診断や治療にとって重要な骨髄像検査もおこなっており、血液腫瘍科や小児科より月50件~70件の検査を実施しています。
糖尿病の診断・経過観察に重要な血糖負荷試験やヘモグロビンA1cの検査もおこなっています。
検体検査2課(一般、微生物)
血液以外の尿・便・精液・各種穿刺液などの性状の検査や、各種検体の微生物検査などを行っています。
一般検査係
尿検査、便検査、脳脊髄液、胸水・腹水・関節液などの穿刺液や精液検査を行っています。
尿定性検査 | 試験紙を用いて尿中に蛋白や糖が出ていないか、血液が混じっていないかを調べることにより、腎臓などの具合をみます。 |
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尿沈渣検査 | 尿中の細胞や赤血球、白血球、結石でみられる結晶、細菌などを顕微鏡で観察します。 |
脳脊髄液検査 | 脳脊髄液中の細胞や蛋白、糖などを測定して中枢神経系の炎症などを調べます。 |
精液検査 | 精液中の精子数や運動率、奇形率を顕微鏡で観察し、不妊症などを調べます。 |
微生物検査係
患者さんから採取される、さまざまな検査材料(尿・便・喀痰・膿・体腔液など)から、病気の原因となる菌を特定し、どの抗菌薬が有効なのかを検査しています。
このほかに、インフルエンザ・ロタなどのウイルスを検査する迅速検査や、結核菌の検査などを行っています。また新型コロナウイルスの検査も行っています。
私達は検査だけでなく、医師・看護師と連携し、院内感染の予防にも努めております。
鏡検 | 検査材料をガラスに塗り、特殊な染色をし、顕微鏡で色や形によって、細菌の種類を検査します。また、便中の寄生虫卵の有無を調べます。 |
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培養 | 検査材料、目的菌に応じて適切な培地を選び、培養します。培養は目的菌を検出しやすい条件下(温度・酸素の有無など)で、48時間から72時間行います。必要に応じて、培養時間は延長します。 |
同定 | 培養した培地より、病原菌と考えられる菌を特定します。(大腸菌・肺炎球菌など) |
薬剤感受性 | 同定した菌にどの抗菌薬が有効かを検査します。 |
遺伝子検査 | 遺伝子解析を行い、病原微生物を特定します。 |
輸血検査課
輸血検査室では血液型の検査、不規則抗体(輸血をしたり、妊娠をしたりするとできてしまう赤血球の抗体の事)の検出、安全な輸血を行うための交差適合試験を行っています。また、血液製剤、アルブミン製剤の管理保管を行っています。
検査法は全自動の輸血検査システムと試験管法を併用して実施しています。
当院では、血液腫瘍科があり、多くの輸血療法が行われています。
さらに地域の三次救急を担っているため、心臓血管外科等の大きな手術、周産期医療に伴う弛緩出血等の緊急輸血に対応するため、他部門の技師の協力により24時間体制を取っています。
また、通常の輸血のみならず、緊急大量輸血に対しても安全、適切な輸血の為に他部署、輸血療法部会との連携を図っています。(2016年以降全製剤廃棄率1%未満)

生理検査課
生理検査は血液や尿を扱う検体検査と異なり、検査技師が直に患者さんに接して検査を実施するため、検査部の中では患者さんと接する機会の多い検査室です。心電図、脈波、呼吸機能、脳波、神経生理、耳鼻科検査、超音波検査(腹部・心臓・血管・乳腺・甲状腺等)など生理機能に関する検査を実施しており、令和4年からは、睡眠時無呼吸症候群の検査として、入院して実施する終夜睡眠ポリグラフや自宅で実施することのできる簡易式の装置も新たに導入しました。また、緊急時の対応として、超音波検査と心臓カテーテル検査は24時間対応で実施しています。
認定資格取得も積極的に取り組み、超音波指導検査士(1名)をはじめ、超音波検査士(7名) 、血管診療技師(1名)、2級臨床検査士(6名)、緊急検査士(2名)、日本不整脈心電学会認定心電図専門士(1名)が在籍しています。
循環機能検査
心臓のポンプ作用により、血液は血管系を通って全身に送られ、体循環・肺循環を構成しています。この心臓の機能やそれによって影響を受ける身体各所の情報を検査します。
心電図 | 心臓の電気活動を記録して、不整脈や虚血性心疾患など心臓に異常がないか調べます。 |
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ホルター心電図 | 携帯可能な心電図記録装置です。運動・睡眠など通常の生活をした状態の心電図を24時間分記録することができます。動機、失神、めまい、胸痛などの症状の原因検索や、不整脈治療の治療効果判定にも有用で、解析は院内で行っています。 |
トレッドミル検査 | ベルトコンベアを歩き心臓に少し強めの負荷をかけて心電図変化を調べます。虚血性心疾患診断の一助になります。 |
指先容積脈波 | 指先などの末梢細動脈の血行動態を調べます。 |
PWV(脈波伝播速度)/ABI(足関節上腕血圧比) | 上腕と足首の血圧を同時に計測し、血管壁の硬さと血管内腔の狭窄の程度を調べます。 ※健診ではオプション検査として実施しています。 |
TcpO2 | 皮膚にセンサーを当て加温した状態で、皮膚の酸素量を調べる検査です。下肢の虚血の重症度や潰瘍の治癒可能予測、治療効果判定に役立つ検査です。 |
ABI検査
神経機能検査
人の神経は脳と脊髄を合わせて中枢神経といい、脊髄から腕や脚に出ている神経を末梢神経といいます。神経機能検査とは、これらすべての神経の働きをみる検査です。
また、脳外科手術において術後の後遺症(運動麻痺、感覚麻痺等)のリスクを軽減する為に、術中モニタリング(MEP)を行っています。
脳波 | 脳が働いている時の電気活動から、脳の神経の働きを調べます。脳腫瘍、脳損傷、てんかん、脳血管障害などの診断に際して必要な検査です。 |
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神経伝導検査 | 末梢神経を刺激して運動機能を評価する検査です。当課では、整形外科領域の疾患(手根管症候群、肘部管症候群など)を主として実施しています。 |
誘発筋電図検査 | 誘発筋電図検査の中でも、顔面神経麻痺の予後判定として重要なENoGと呼ばれる検査を実施しています。 |
聴性脳幹誘発反応 | 音刺激により発生した誘発電位を記録し、聴覚に関する神経の働きを調べる検査です。聴力の他覚的検査のひとつで、乳幼児など小さなお子さんでも可能な検査となります。 |
聴力検査 | 低い音から高い音までのいろいろな周波数の音を聞いて、どこまで小さい音が聞こえるか調べます。また言葉をきちんと捉えられているかを調べる聴力検査もあります(耳鼻科外来に出向し検査を行ないます)。 |
呼吸機能検査
肺から出入りする空気の量などを測定して、肺の働きを調べる検査です。もっとも一般的な検査が肺活量の測定で、呼吸器疾患の重症度の判定、大きな手術の前に肺の働きを確認するために行います。その他必要に応じて、下記のような検査が行われます。
肺活量 | 肺の大きさと、気管支の状態を調べます。 |
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残気量 | 息を全部はき出したときの肺の大きさを調べます。 |
肺拡散能力 | 吸った酸素の肺から血液への移動状態を調べます。 |
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まっている状態が繰り返される病気です。昼間の眠気、だるさだけでなく、現代病で代表的な心臓病、高血圧、糖尿病、脳卒中などの発症リスクが高くなります。 当院では、ご自宅で検査可能な簡易式の検査や1泊入院で実施する終夜睡眠ポリグラフという検査を実施しています。
ウオッチパット(簡易式) | 自宅に専用の装置を持ち帰り、患者さんご自身でセンサーを装着し、就寝中の血中酸素飽和度、呼吸の状態を調べる検査です。 健診ではオプション検査として実施しています。 |
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終夜睡眠ポリグラフ | 1泊入院して行います。睡眠状態を総合的に評価するため、血中酸素飽和度、呼吸、脳波、心電図など様々なセンサーを装着した状態で就寝する精密検査です。 |
体液量測定
体内の水分量,筋肉量,脂肪量などの体組成を調べる検査です。主に透析患者さんの水分量を分析するために実施されています。
超音波検査
超音波とは、人の耳に聞こえない高い周波数の音です。体に当てた探触子から超音波を発信すると、組織の境界で反射し、エコーとして戻ってきます。発信してから受信するまでの時間と音の減衰の程度を、電気的に処理をすることによって、映像化しモニターに映し出します。また、ドプラ効果を利用して血液の流れに色を付け、流れの方向や血流速度を調べることもできます。
超音波は「音」なので、体に侵襲もなく繰り返し実施可能な安全な検査で、体のいろいろな臓器や血管の観察を行うことが出来ます。
腹部超音波 | 肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、脾臓、膀胱、消化管などの臓器を対象に観察します。検診、手術後の経過観察、腹痛・下痢などの急性腹症、腫瘍の有無などについて調べます。 |
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乳腺超音波 | 乳腺の状態や腫瘍の有無、さらに腫瘤が良性か悪性か、リンパ節が腫れていないかなどについて調べます。近年増加傾向の乳癌の発見にも役立っています。 |
甲状腺超音波 | 甲状腺の大きさ、腫瘍の有無などを調べます。 |
心臓超音波 | 心臓の大きさ、心臓の筋肉の収縮、筋肉の厚さ、心内血流の状態などを調べます。心筋梗塞、心臓弁膜症、先天性心疾患、心肥大などを診断するうえで重要な検査の一つとなっています。 |
頚動脈超音波 | 頚部動脈の動脈硬化による変化や血液の流れなどを調べます。 健診ではオプション検査として実施しています。 |
下肢動脈超音波 | 足の動脈の動脈硬化の程度や血液の流れ、血栓の有無などを調べます。歩行した際に痛みがでる、下肢の潰瘍形成の原因を調べるために実施したり、血行再建治療後の経過観察にも有用な検査です。 |
下肢静脈超音波 | 足の静脈の血液の流れ、血栓の有無などを調べます。いわゆる、エコノミー症候群の原因である深部静脈血栓症の診断や下肢静脈瘤の原因を調べるために実施します。 |
皮膚科・形成領域 | 全身の皮膚・皮下脂肪・筋層などの体の表面部分にできものの状態を調べます。 |
心臓超音波検査
スタッフ紹介
検査部長 野口 博史

資格
- ICD認定医
メッセージ
15年間特定感染症指定病院の感染症科部長として、新型インフルエンザ、エボラ病疑い患者など、様々な輸入感染症に対応してきました。
検査部としては、患者さんの診療にお役に立てるよう、安全に十分配慮しつつ迅速かつ正確な結果の報告に日々努めてまいります。
臨床検査技師
氏名
柴田 義則 技師長以下
臨床検査技師44名
資格
- 認定一般検査技師:1名
- 認定血液検査技師:1名
- 認定輸血検査技師:1名
- 2級臨床検査士(循環生理学):6名
- 2級臨床検査士(血液学):3名
- 2級臨床検査士(臨床微生物学):1名
- 2級臨床検査士(免疫学):1名
- 緊急検査士:6名
- 超音波指導検査士(腹部領域):1名
- 超音波検査士(消化器):7名
- 超音波検査士(循環器):3名
- 超音波検査士(体表):2名
- 超音波検査士(泌尿器):1名
- 超音波検査士(健診):2名
- 血管診療技師:1名士
- 心電図専門士:1名
- 経食道心エコー認定:1名
- 遺伝子分析科学認定士:1名
- 細胞検査士:1名
- 国際細胞検査士:7名
- 糖尿病療養指導士:1名
- NST専門療法士:1名
- 認定心理士:1名
- 臨床倫理認定士:1名
- 医療安全管理者:1名
臨床検査取扱件数(令和5年度)
検査内容 |
外来 |
入院 |
受託 |
検診 |
小計 |
---|---|---|---|---|---|
一般検査 |
83,037件 |
17,538件 |
- |
11,321件 |
111,896件 |
血液検査 |
287,314件 |
180,703件 |
- |
11,881件 |
479,898件 |
生化学検査 |
1,676,468件 |
908,827件 |
- |
97,452件 |
2,682,747件 |
血清検査 |
243,828件 |
104,019件 |
- |
16,393件 |
364,240件 |
輸血検査 |
9,465件 |
14,850件 |
- |
603件 |
24,918件 |
微生物検査 |
30,720件 |
38,478件 |
270件 |
0件 |
69,536件 |
生理検査 |
34.720件 |
9,746件 |
- |
21,225件 |
65,691件 |
病理検査 | 11,481件 | 5,521件 | - | 1,214件 | 18,216件 |
院内検査合計 |
2,377,101件 |
1,279,682件 |
270件 |
160,089件 |
3,817,142件 |
外注検査合計 |
67,104件 |
24,446件 |
- |
10,437件 |
105,196件 |