ハイチ大地震の被災者救援のため、平成22年4月から約1カ月間、当院から浅香朋美医師を被災地に派遣しました。
空港に降り立った瞬間からものすごい暑さと埃、そして人々の熱気に囲まれ、車まで必死に荷物を運び、3ヶ月経ってもまだ瓦礫だらけの町並みを抜けてクリニックに近づくにつれて不安がどんどん大きくなっていきました。ちゃんと任務が果たせるだろうか・・・と。でも、やるしかない。とにかく毎日必死でした。
私は日赤が運営していた2つのクリニックのうち、震源地により近いレオガンという地域のクリニックに派遣されました。主な仕事は、その地域で唯一のレントゲン装置で他のNGOやクリニックから紹介されてくる患者のレントゲン写真を撮ることと、ハイチ人のドクターと協力して診察や小手術を行うこと。電力や燃料の不足により撮影時間が限られ、全ての患者さんのレントゲン撮影ができなかったり、充分な設備や資源がないため、日本であればあたりまえの処置や治療ができず、後遺症が残ることが明らかであるのに何もすることができなかったり、胸を締め付けられるようなことがたくさんありました。緊急支援から復興支援への移行期でもあり、クリニック運営においても様々な問題が発生し、心が折れそうになることもたくさんありました。
そんな中頑張れたのは、過酷な環境にあっても底抜けに明るいハイチの人たちの笑顔のおかげでした。世界で最も貧しい国のひとつであると言われている国ですが、人々の生きるパワーと笑顔は本当に素晴らしい。ハイチの復興にはこの先10年以上の長い年月がかかると言われてますが、彼らはきっとその笑顔とパワーで乗り越えていくのだと思います。その歴史にほんの少しでも貢献できていれば光栄です。
成田赤十字病院 医師 浅香朋美